EPISODE

タイミング

これは中野の北口、丸井本社ビルの下にあったコンビニでのお話。
今まで話してきていたんでpart3になりますね。

15～16年前の話ですよ。
ここは本部直営店だったんで、夜勤は2人で仕事をしていました。2人体制の夜勤です。それで、私がレジについてるときです。やせ型で、茶色いサングラスをかけて、黄色い感じの薄いピラピラの派手な上着を着て、下は黒いズボンだったかな？そんな見た目のお客さんが入ってきたんですよ。でね、入って来るなり
「おい、何だこのボールペンは。この店で買ったんだよ、このボールペン。ああ？全然書けねえじゃねえか！おい、おまえ、この店は不良品を売るのか？」
「はあ？」
いきなり言われたんで、びっくりしまして
「ああ、そうですか？そしたら、買ったときのレシートはございますか？」
なんて聞くわけですよ。
「レシートなんか持ってねえよ。おまえ、早くこれ交換しろよ！」
「分かりました。それで、レシートが無かったら基本的に交換はできないんですよ。証明書が無いと分からないので。購入したのは何時ぐらいですか？」
「分かんねえよ、そんなの。忘れちゃったよ、そんなの。俺さ、渋谷の道玄坂からタクシーで来たんだよ。兄貴に『おまえ、すぐ交換してこい』って言われて。」
「ああ、そうなんですか？いや、大変ですね。」
というようなやり取りをして、ずっと引き下がらなかったんです。どうしようか？と思っていたら
「おまえ、店長呼べよ！」
と言ってくるわけですよ。それで、どうしようと思って
「分かりました。」
と言って、レジを交代してもらって、店長に電話をして言ったんですよ。
「店長どうしましょうか？もう面倒くさいお客さんで『お金出せ！』って言っているんですよ。」
って言ったら
「ああ、もう出しちゃっていいですよ。」
と言われたので、レジに戻りました。

「分かりました。ボールペンの代金はお返しいたします。」
と言ったんです。そしたら
「おい、違うよ。おまえ、ボールペン代だけじゃねえよ。タクシーでここに来たんだよ。タクシー代も出せよ。」
もうね、絶対に怪しいと思いましたよ。
「あの、タクシー代とかは出せないんですが……。」
「何だ、この野郎！俺さ、すぐ隣の野方警察署の○○警部と知り合いでさ。あの兄貴にも言うぞ！テメェ。」
警部のことを兄貴って呼ぶような人……。何かおかしいなと思いまして
「もう一度、店長に電話をしてくるので、少々お待ちください。」
と伝え、再度事務所に戻って、店長に電話をしたわけですよ。
「ああ、分かりました。タクシー代って、いくらぐらいですか？」
「1万円くらい出せって言っているんですよ。」
「分かりました。面倒くさいんで、私の自腹でいいですから、1万円払ってください。」
「いいんですか？」
というやり取りをして電話切ったんですがね……。
私、これは絶対に詐欺だし、嘘だと思って腹が立ってね。野方警察署の○○警部と知り合いで、警部のことを兄貴と言うのもおかしい……。すぐに野方警察署に電話しましたよ。

「あの、コンビニの店員なんですが、今はこういうふうな状況になっておりまして……。野方警察署の〇〇警部っていますか？」
と尋ねたら、○○警部という方が実際にいたんですよ。
「はいはい、今、お電話代わります。」
となって、電話を代わってもらったんですね。それで、今起こっていることを話ししたら
「は？知らないよ、そんな人。何、今そんなこと言っているの？分かりました。もうちょっと、そいつを止めておいてください。すぐに警察官が向かいますんで。」
ということで、電話を切ってレジに戻りました。
「あの、少々お待ちください。今ちょっと店長と連絡がつかなくて……。もうちょっとで連絡がつくと思うので、お待ちください。」
って言って、何とか抑えてたんですよ。

「早く金を出せよ！兄貴が待っているんだよ。俺、野方警察署長いんだからな。警察も呼ぶぞ！」とか言っていたときに、店の自動ドアの向かい側に、パトカーがキィーって止まりました。
私の目線から見ると「金を出せ、金を出せ」と言っているチンピラ風の男の後ろ側に警察官がどんどん集まってくるわけですね。それで、その映像が二重で見えるわけですよ。私は面白くなって、だんだんにやけてくるんですけど「おまえ、何笑っているんだよ。」
「いや、すみません。」
と言ったところで、バーンって自動ドアが開いて、おまわりさんが入ってきたんです。
「おい、おまえ。俺と知り合いだって？」
と言いながら警察官が入って来たんですね。そしたらチンピラは青ざめちゃってね。それて、聞いたこともない台詞を言いましたよ。こんな台詞、時代劇じゃないと聞かないですよ。
「テメェ、覚えてやがれよ。」

はい、覚えていません。というお話。

金銀財宝☆只野編隊のごきげんなラジオ
2024.03.16 O.A.より