金銀財宝☆只野編隊 金銀財宝☆只野編隊

EPISODE

ふくみ笑い

コンビニの夜勤をやっていると、大体ワンオペなんですよ。奇妙なものもいっぱいありますよ。こういうことを言うと失礼かもしれませんが、普通のお客さんでも奇妙に見えちゃうとかね……。

これは中野であったお話です。
いつも深夜の3時~5時の間に来るお客さんがいて、2週間に1回ぐらい会うのかな? 片足を引きずって入ってくる老人がいるんですよ。最初に会った時は、足を引きずりながら入ってきて、ビールとお菓子やおつまみを袋にいっぱい買っていくんですが、自転車で帰っていくんですよ。足を引きずっていて、自転車を運転できるのかなと思うんですけど、運転しているんですね。
最初に会った時、何だか、あんまりいい感じじゃなかったんです。何ていうか、レシートを渡しても疑うようにレシート見るし、上から物を言う老人ですよ。70代から80代の方かな? 細身で160cmぐらいかな? 白い帽子と白い作業着みたいなものを着ているんですよ。でも、そういう方でも数年間接客していると、少しは普通の方だとか思っていくわけですよ。最初は嫌でしたけども……。

そんなとき、お店の近くで強盗事件があったんですよ。怖いですよ。お店から100mもない。もっと近い70mぐらいの場所ですよ。そんな話があって、その老人に強盗事件のことをポロっと言ったんです。
「いや、怖いですね。このお店の70mぐらい近くで強盗事件あったんですよ。」
と言ったら。その老人
「うん、知っているよ。スーって入って来たの。あれも怖いよな? 朝の9時半だっけ? 何か2人組の男が、宅配便か何かって言って誘い出した男の手足を縛って、ハンマーで頭を殴っていたんだろう? それで、その男性が『助けてくれ!』って言うから、住民の人が警察を呼んで、警察もすぐ来たけれども、その犯人は屋根伝いにドンって逃げてったと。捕まんなかったなあ。」
いやいや、詳しい情報がボンって返ってきたんですよ。
「おお、そうです。そのとおりです。私もそういう事件は、新聞を返本する前にサーっと見るんですが、社会欄のいろんな事件、全国で起こった、世界で起こった事件とかも細かくチェックしているんですが……。いや、細かいと。すごいな、このおじいさん。怖い感じもあったけども、話す内容はあるなって思って、毎回来るたびに話していたんですよ。

そんなとき、僕が練馬のお店で振り込め詐欺を阻止して、警察署から感謝状もらったんですね。それで、その老人に
「感謝状をもらったんですよ!」
と言ったら
「おお。よかったな、お兄ちゃん。どんな事件?」
「振り込め詐欺を阻止したんです。」
と言ったらですね……。
「ああ、そしたらな、それは松竹梅で言ったら、梅だな。梅だ。梅。うんうんうん。」
『は?』と思ったんですよ。
「何ですか、それ? 松竹梅。」
「あのな、お兄ちゃん。感謝状っていってもな、そりゃ命を懸けて人を救った感謝状と、お兄ちゃんのように、人のお金、詐欺を阻止した感謝状では、感謝状にもランキングがあるんだよ。」
「ええー! 本当ですか?」
「うん。お兄ちゃんは梅だな。一番下のやつだ。それは、もう命を救ったり、体を張って人を助けた場合は、そりゃ松竹梅の松だな。」
と返ってきたんですよ。
「でも、お兄ちゃん、良かったな。感謝状っていうのは役に立つぞ。例えば、お兄ちゃんが交通事故を起こして、お兄ちゃんが100%悪いという場合、感謝状を持っていると9:1ぐらいになる。うまくいけば8:2ぐらいの割合で罪が軽くなるんだよ。」
「ええー? 感謝状って、そんなゴールドカード的な力があるんですか?」
「うーん、そりゃそうだろう。世の中のためにお兄ちゃんが体を張ったんだから。」
「はあ……。」

それで、ふと思ったんですよ。この人は何でこんな詳しいんだと。事件にも詳しい。それこそ、その場所で起こった50年前、70年前の事件まで僕に提供してくれたんですよ。
帰り際に 「もしかして、元警察官ですか?」
と聞いたんですよ。そしたら、そのおじいさん……。ちょっとうつむいて、ニヤッと笑って、スーっと帰ってきました。

格好良かったね。
たぶん、言わないってとこが元デカなんでしょうね。詳しいんだもの。まあ、分かります。それで、何で上から物を言ってくるのかとか、何で疑い深いのかっていうのが分かったんですけれどもね。まあ、その方は2週間に1回、毎回いらっしゃいますね。

という、片足を引きずって来る老人というお話でございました。

金銀財宝☆只野編隊のごきげんなラジオ
2024.11.16 O.A.より