EPISODE
16年目の不思議な出会い
こちらのエピソードは語り音声をお聴きいただけます。
金銀財宝☆只野編隊でございます。
今回、ラジオで言いたい話だったんですが、ちょっとラジオでは言えない話なので、こちらで録音して、ホームページに掲載したいと思います。
私、専門学校に行っているんですよ。パソコンの専門学校ですよ。この年になって運良く機会が巡ってきて、専門学校に通うことになりました。
本当だったらもっと若いときに気づくべきなのでしょう。今更ですが、パソコンというものがこの時代に生きる人間としての最高の武器だということに、当たり前のように気づいてしまいました……。まあ、どうせダメだとしても、知らないよりは知っていたほうがいいんじゃないかと思って、パソコンの学校に通っているんですよ。
期間は約4か月です。月曜日から土曜日までの週6日、9時から15時まで5時間ぐらいやるんですね。学校は新宿にあり、毎日通っています。
授業の内容は、いろんな仕事をする人のための講義などもあり、パソコンの授業だけじゃないんですよ。職業人になるための講義を1か月受けた後、パソコンの授業を3か月ぐらい受ける感じです。今、やっと1か月が終わりました。仕事をするための人間としての構築みたいな授業もありまして、またこれがつらいんですが……。その中に『職業人講義』という授業があって、キャリアコンサルティングの仕事をしている人たちなのかな? いろんな経験をなさった方が『こういう仕事だよ』『あなたが目指す道は、こういう仕事があるんだよ』みたいな講義が2回あるんですよ。
1回目はクリアしました。ベテランの事務職の男性が来ました。
その後、我々が毎回習っている先生から、2回目についてのお話がありました。
2回目の講師は、元芸人の男性がいらっしゃると言ったんです。私はもう、自分が芸人だってことを伏せて専門学校に通っているわけなんですよね。なるべく知られたくない感じでやっているんですが
『ああ、芸人か……。元芸人が来るんだ……。』
なんて思ってね。私は知らないふりをして
「先生、有名な方ですか?」
と聞いたら
「いや、全然有名じゃないんですよ。昔、芸人をやっていたみたいなんですよ。」
と言われて
「ああ、そうですか。」
まあまあ、いろんな人がいますからね。芸人をやって成功している人もいれば、ほとんどの人たちが成功しないで辞めてしまっていますからね。まあ、私なんかは例外で、めずらしいですね。私なんて売れてもいないのに、未だに何かくっついている感じで芸人をやっているんですがね。
そして、2回目の職業人講義の日が来ました。
私がアルバイトをしている店の店長に
「今日、職業人講義で元芸人の方がお話に来るんですよ。」
ということを話したら
「ええ? 佐藤さんの知っている人が来るんじゃないですか?」
「そんなわけないでしょ? もう、辞めちゃってほとんどいませんよ。」
「佐藤さん、芸人だってことがバレちゃうんじゃないの?」
「もう、いい加減にしてくださいよ。」
という会話を交わした後に授業を受けに行ったんですよ。
朝9時の授業が始まって、スーツを着た40歳ぐらいの男性が、パッと振り返って
「おはようございます。今日は職業人講義をする○○○○です。」
と言ってきたんです。
振り返った瞬間
『あれ? いや、嘘だろう。でもなんか、あれ……?』
うっすらとしている私の記憶が、ゆっくりとよみがえっていくんですよ。
「名前は○○○○です。」
『むむ? え? これは!』
私は東京のNSC13期生なんですが、NSCで学んでたときに講師の方の名前を聞いたことがあるような……。
『ああ! え?』
それは15~16年前ですよ。
講師の方はNSCの同期で、私たちと一緒にやっていて、4年ぐらい芸人をやっていたのかな? なかなかいいポジションにいたんですね。それで4年間やって、急に芸人を辞めるという話を聞きました。あんまり仲が良い方ではなかったんですけど……。
何ていったって、NSCの同期は600人ぐらいいて、そのうちの半分ぐらいが削られて、その半分になっていくんですが、今じゃもう20~30人いるかどうか分かんないですけどもね。それで、目の前には、ちょっと日焼けした感じで15年経った彼がいたんですよ。
『ええ? マジか!』
私はもう金髪をやめ、髪の毛を切り、黒い短髪で眼鏡をかけ、マスクをつけてやっています。一瞬、向こうも気づくかな? と思ったんですよ。でも、気づきませんでしたね。僕はすぐに気づいたんですけどね。向こうも、まさかここにNSCの同期がいるとは思いませんからね。
その人はキャリアコンサルティングの先生として来ているんですが、5時間の授業の中で、1時間ずつその人が歩んできた人生を語っていくんです。
1限目は、今まで自分がどう生きてきたかを話していくわけですよ。
その人は、生まれました。次は芸人をやりました。芸人がダメで会社に就職しました。その会社を辞めて、もう少しレベルの高い会社に就職しました。その会社で精神的に落ち込んでしまったために会社を辞めました。その後、フリーターをしながらキャリアコンサルティングの資格を取り、現在はキャリアコンサルティングをちょこちょこっとやりながらフリーターをしていると……。
「私はこういう生き方をしてきました。皆さんもいろいろあったと思います。再就職して頑張ってください!」
みたいな内容で講義が終わりました。
2限目だったかな。私と同じNSC13期で同じ経験した話を淡々とするんですよ。私も久しぶりに思い出しましたよ。そうだった。彼も一緒にいたな。彼もその場所にいたわ。
『俺、そのときにいた同期で、(当時)さ藤すぺくたーという芸名でやっていたんだよ!』と声を掛けたかったけど、気づかれたくはないという気持ちもありますから、実際には
「そうなんですか。そうなんですか。」
なんて言っているんだけど、久しぶりに思い出しました。
こんな出会いってあるんですね。
結局、私は彼に
『実は俺、同期だったよ。』
とは言わずに
「お疲れさまでした。」
と言って、何事もなかったのかのように終わりました。
一瞬ドッキリかと思ったけどね。
カメラをチラチラ見たけど、そんなわけないだろう。売れてねえし。芸人なのかどうかも分かんないんだから。こんな場所に、専門学校にいるっていうのもどうかと思うんですが……。
神様は、本当に不思議な出会いを私に与えてくれました。
というお話でございます。
ではまた。