金銀財宝☆只野編隊 金銀財宝☆只野編隊

EPISODE

(実話怪談)深夜の配送業男性の体験談

【前編】カナブンの群れ

夏と言えば納涼。ちょっとは涼しくなってもらいたいということでね。

本当は去年に話したかったんだけど、今年のこの時期まで我慢してきたお話です。
ある人が経験したという実話を聞きました。

ただ聞くと言っても、コンビニの深夜勤では会う人は決まっているのよ。
よっぽどのことがなければ、お客さんから話を聞くということはないけど、コンビニに納品に来るヤマザキさんとか、ペットボトルやカップラーメン、ドリンク系、お菓子系を運んでくださる方、雑誌を運んでくださる方なんていう人も来るわけですよ。本当に数少ないです。でもね、聞くんですよ。
「僕さ、オカルト好きなんだよな。夜に仕事をしているじゃない? 何か変なことが起こったり、そういう経験をしたことがありますか?」
そうすると、こっちが逆にびっくりするぐらいに、全員が「ある」と言うんですよ。嘘だろうと……。
「本当ですか?」
「はい、あります。」
と……。
僕も、コンビニ夜勤を30年以上やっていて、いろんな経験があるんで、そのお話をしてあげたら返してくれるんですよ。

この話は、ペットボトルとかお菓子を運んでくださる黒髪の小柄な方で、私と同じぐらいの年齢でしたね。すごく真面目そうな方で、笑うと歯が少ない感じの方なんですよ。でも真面目で一生懸命、小柄ですけど体はがっちりしていますよ。ペットボトルを運ぶわけですよ。コンビニで運ぶ中では一番重いですからね。その方が話してくれたんですよ。もちろん、仕事が終わってハンコを押してあげるときにポロっと言ったらね……。
「ちょっと僕、この話はあんまりしなかったんですよ。僕の中では、こういう話をすると周りの人たちが嫌がるし、変な顔するから、僕の中では封印していたんですよ。ただね、佐藤さんがそんなにご興味あるなら、佐藤さんからもいろんなお話を聞かせていただいたんで、ちょっと僕も話しましょうか?」
と話してくださったんですよ。

東京都の出身で、僕と同じぐらいの50代前半くらいの方です。
その方が小学校の低学年の頃かな?
夏のある日、関東のとある場所に家族で民宿か何かに泊まりに行ったみたいなんです。大きな川があるところで、虫取り網を持って家族で行ったと。家族はお父さん、お母さん、妹さん。そして彼の4人で行ったそうです。
川沿いのところに車を止めて、自動車が1台ぐらい通れるような橋があったのかな。虫取り網と虫かごを持って家族で橋を渡っていたら、橋の向こう側から何か飛んでくるものがあるそうですよ。ものすごい大群がブワーンって。
「え? 何?」
と家族で目を凝らしていたら、昆虫のカナブンの大群がブワーンと橋の向こうからこっち側に飛んでくるそうですよ。虫取り網を持っているから、兄弟で
「うわーっ! すごい、すごい!」
と言って、そのカナブンを取るわけですね。お父さんも
「うわっ。何だ、これは?」
と言って、家族で盛り上がっているんですが、ただ1人、お母さんが
「うぁぁぁ……。」
と言ってしゃがみこんじゃっているんですよ。
「お母さん、何をやっているの? これ、カナブンすごいよ!」
と言って、虫取り網でカナブンを取っていたら、お母さん震え上がって
「もうダメ、もうダメ……。」
立ち上がって、フラフラしながら先に行っちゃったそうです。
「何だよ。」
と言って、その後を家族で追っかけていって
「どうしたの?」
と聞いたら、急に
「私ね、多分ここで死ぬわ。」
と言ったそうです。
「は? 何を言っているの、お母さん。」
後から聞いたら、お母さんは心が優しいというか、ちょっと気の弱いような方だったそうですね。
『何でカナブンを見たのに、私は死ぬわとか言ってくるんだろう……。』
と、小学校低学年の心の中で変に思っていたら、お母さんがボソッて言ったんですよ。
「あなたたち、あれカナブンだと思ったの? 何を言っているのよ。あれ、全部生首よ。生首がこっちにバーって向かってきたのよ。それで、その真ん中に私の首があったのよ!」
「は? え? お母さんやめて。怖いよ。」
と言って、その日はもう旅館のほうに帰ったそうです。
『何か変なことがあるな。お母さん大丈夫かな?』
と思っていたけど、民宿でおいしいご飯を食べて、お風呂に入って寝ようって寝ていたら、今度は深夜に、お母さんとお父さんが揉めているそうなんですよ。
「帰りましょうよ。」
「何でだよ。帰んねえよ。」
「いいから帰りましょう。私ダメ。ここダメなの。」
「帰んない。何でだよ。」
話し声がうるさいから、耳を傾けて聞いていたそうです。そしたら
「今、この部屋でも私の足を白い手が引っ張るのよ。私は寝られないのよ。帰りましょうよ!」
と言って、けんかみたいな感じで話していたそうです。
何とか落ち着かせて、その日はちゃんと泊まってお家に帰ったそうなんです。

ここまで話してくれたところで
「佐藤さん、すいません、時間だわ。ちょっと話しすぎちゃったわ。」
と言って、その日は帰っていったんです。
『その話、怖いな。この人すごいな。すごい経験をしているんですね。』
みたいに思っていました。

【後編】早朝の足音

次の日、またその方が来たので
「いやー、昨日の話はすごかったですね。すごい経験でしたね。」
と言ったら、仕事終わった後、搬入し終わった後にその人が止まって
「佐藤さん、実はこの話には続きがあるんですよ。」
「続き?」
「だから、お母さんが何か橋の上で、そういうのを見ちゃって……。夜中にちょっと気が動転しちゃって……。」
「何か、変な経験をしたんじゃないんですか?」
「違うんですよ。」
そう言うと、続きを話してくれました。

小学生の頃のお話から15~16年経ってからかな。その方が20代の頃、お母さんが急に失踪したそうです。それで家族にも身内にも電話して、いろいろやったんですけど、つながんなくて、どこにもいないんですよ。その後3~4日お母さんがいない状態。もちろん警察にも報告して、行方不明届みたいなのを出した。そうしていたら、本当に3~4日後の深夜だったかな。トイレに行って、トイレから出てきたら、玄関にお母さんが立っていたそうなんですよ。玄関の入り口に水槽があって、魚を飼っていたそうですが、お母さんがずっと水槽を見ていて
「お母さん帰ってきたの? 何をしていたの?」
と声をかけたら、スーと消えていったんだって。
パッと見はお母さんだったけど、よく考えたら、何かテレビのモニターに映っているような映像みたいだったそうです。

また次の日、今度は朝の6時ぐらい。
寝ているときに玄関のドアがドーンという音がして、足音が聞こえてくるんだって。男性と女性の足音が、1階の玄関をドーンと落として、廊下をダッダッダッと歩いていくんだって。
『誰だ? 誰だ?』
と見に行くじゃないですか。そしたら何にもないんだって。
お父さんや妹に
「今さ、足音したよね? 誰か入ってきたよね?」
と言ったら
「は? お前何だよ。何にも起こってねえよ。」
と言われたそうです。
そしたら、その日、身内から電話がかかってきたそうなんですよ。
「あのさ。」
「何ですか? 見つかったんですか?」
「違う、違う。あのさ、新聞に記事が出ているけど、これ違わない?」
と言われて、その新聞の名前を聞いたそうです。
そして、その新聞の記事を見たら、川の橋の辺りで女性の遺体が見つかったという内容だったそうです。
「え?」
違うとしても、すぐに記事に書いてある警察署に電話をしたそうです。そしたら警察署員が
「分かりました。とりあえず一度、署のほうに来てください。」
ということで行ったそうです。そしたら、お母さんだったんだって。
いやー、お母さん、あの橋の上から身を投げたそうですよ。

話を聞かせていただいて、その人はこちらが引くぐらい、ずっと封印していたんでしょうね。
「次の仕事大丈夫ですか?」
と言っても
「佐藤さん、もうちょっと聞いてください。お願いします。」
という感じで話していて、我に返った感じで
「佐藤さん、すいません。じゃあ帰ります。」
と帰っていって、本当にそこから10日か15日ぐらいで違うところに行っちゃった。何だったんでしょうね。1か月くらいしか会ってなかったんですけど、その話を私に伝えるために来たんですかね? 最後にね
「いや、でも佐藤さん。こんな話、本当に久しぶりにしました。」
と言って
「すごいですね。お母さんだったんですか。何だったんでしょうね。家族は経験していないのに、あなただけ?」
「はい。実は僕、これだけじゃないんです。もう何か、小さい頃からすごい経験がありまして、いろんな話があるんですよ。」
と言っていたから
『やっべ、次回もっと聞こう。もっと聞こう。』
と思ったら、次はもう違うところに行ってしまっていたという方なんですね。

まあ、皆さん隠していますね。
まあまあ、確かにこんなお話したら、周りの人は引くのかもしれないね。
「こういうお話をなさったんで、多分、お母さんのお墓参りをした方がいいですよ。最近行っていますか?」
と聞いたら
「いや、行っていないんですよ。そうですね。ちょっとお母さんのお墓参りに行かないとね。行きます!」
と言っていましたけどもね。

何だったんでしょうね。
お母さんはもともと霊感のある方で、ものすごくそういうのに関して敏感だったのかもしれませんし、普通の人にはカナブンに見える……。カナブンの群れなんてまず、その時点でありえないからね。ありえないのに他の3人はカナブンの群れが見えたし、虫取り網で取ったし。ただ、お母さんにはそれが生首に見えていた。ただ、なぜ
『そこで私は死ぬんだわ。』
と思ったのか。自分の生首が飛んでいたら、いろいろ考えるのかな。そういうことがあったっていうのもすごいよね。
まさかお亡くなりになるとは。そして家で現れた映像、水を見ていたというのも意味あるのかな?
あと、男の足音と女の足音……。女の足音なら分かる。玄関のドアをドーンって蹴って来たとき、おそらく発見された時間だったみたいですよ。警察が発見した時間帯だったそうです。

いや、世の中にはね不思議な話がありますね。

金銀財宝☆只野編隊のごきげんなラジオ
2025.07.19 O.A.より